東アフリカのハブ空港、エチオピア・アジスアベバのボレ国際空港の活気 [越境会 Vol.58]


さて、また前回からの続きです。ナイジェリア最大都市ラゴスの、ムルタラ・ムハンマド空港で、機関銃を持ったナイジェリア軍まで出てくるといういくつものトラブルに直面し、ようやくチェックインできた航空券がラゴス発のアジスアベバ(エチオピア)止まり。東京までの予約を確保しているにも関わらず、経由地ドイツのビザ云々という意味不明な言い合いになり、ラゴスの空港では座席も荷物もエチオピアのアジスアベバまでしかチェックインできませんでした。

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(乗換のビジネス客・観光客でいっぱいのボレ国際空港)

色々なトラブルはあったものの無事アジスアベバ行きに乗って、飛行機は離陸し、次なる中継地アジスアベバへと飛び立った。機内で一息ついて我に返ってみる。アジスアベバについたらどうするか?荷物もアジスアベバで降ろされる。一度エチオピアに入国して荷物ピックアップが必要なのか?その場合、自分はエチオピアビザ持ってないぞ。入国できるのか?アジスアベバから先、東京までのチケットはどうする?ラゴスの空港で起きた事件をアジスアベバの空港職員に今度はどう説明する?またドイツビザ云々言われたら?色々なことを考えながら、アフリカ大陸を西から東へと横断するエチオピア航空の便でアジスアベバと向かいました。

今回利用したエチオピア航空は、アフリカの国営企業としては非常に異質な急成長黒字企業です。アフリカ大陸の企業で、政府100%保有で成長している企業というのが、現在そもそもほとんどありません。エチオピア航空は創業以来60年間、ほぼ全ての決算年度において利益を上げ、また様々な賞も何度も受賞している、アフリカでは異質の航空会社です。国営エチオピア航空の戦略はもちろんアジスアベバ・ボレ国際空港と一体です。航空会社を成長させていく上で、空港も成長させていく必要があります。そんな背景もあり、到着したアジスアベバのボレ国際空港は世界中からの乗り換え客でいっぱいの東アフリカのハブ空港なのです。

だから、機内で心配していた事は何のその。乗り換え客慣れしている空港なので、乗り継ぎカウンターでエチオピア止まりの搭乗券とバゲージタグを見せて事情を説明すると、「ノープロブレム!」と言って、パソコンをチェックしながら、アジスアベバ発フランクフルト経由東京行きのものに、新しく発券しなおしてもらいました。

「アジスアベバで降ろされてしまう私の荷物はどうするの?」と聞いてみたところ、「問題ありません。いま地上係員に無線で伝えて、ルフトハンザ航空のフランクフルト行きに積み替えてもらいました。バゲージタグも貼り替えられています。あなたは空港を出なくても大丈夫。ラウンジでビールでも飲んでて、次のフライトまでゆっくり休んでください。」

ナイジェリアとエチオピア、同じアフリカ大陸にありながらこの2カ国のホスピタリティのあまりの格差に驚きました。しかしその理由に、以前TICAD(アフリカ開発会議)開催のとき、エチオピアのハイレマリエム首相の講演を聞いた時の話を思い出しました。

多くのアフリカ諸国は石油・金・ダイヤモンド・プラチナ・ニッケルなどの天然資源によって成長しています。ナイジェリアもその一国です。ナイジェリア南部デルタ州から大西洋ギニア湾にかけて確認される原油埋蔵量は膨大な量です。しかしエチオピアには天然資源がなく、人材教育で経済成長してきたという、アフリカ諸国では異例の国です。ここ最近、エチオピアに豊富な資源があることが分かり、現在はこれらの採掘に向けた取り組みがはじまりましたが、輸出はまだまだこれからという段階です。TICADで熱いスピーチをしていたエチオピアのハイレマリエム首相のメッセージは、「エチオピアの経済成長は天然資源ではなく、人材育成・教育により成長してきました。」ということです。

エチオピア財務経済開発省の発表によると、2012年のエチオピアのGDP構成比は、

サービス業等 46.0%
農業等 38.7%
工業等 15.3%

と、他のアフリカ諸国とは大きく異なり、実は半分近くをサービス産業が占めます。ちなみに上記の「農業等」の中には、畜産業や漁業なども入るわけですが、特に畜産業はアフリカ大陸最大の家畜頭数を有しており、世界では第10位という規模になります。また、エチオピア農業省の最大のテーマが「農業商業化の強化」という国家戦略があります。政府農業省は投資家から資金を募り、商業化のための効率的な開発支援、国内外のマーケティング・販売ルートの拡大などを支援しています。日本の農協とは大違いなわけです。現在、エチオピアが世界に販売している商品作物としては、アラビカ種コーヒー豆、お茶、サトウキビ、綿花、香辛料など、多種多様な果物と野菜があります。

そして「漁業」。海の無い内陸国がなぜに漁業が活発なのか?は不思議に思うかもしれません。友好関係にある紅海沿岸の国「ジブチ」の漁業権をエチオピアがコントロールしているという側面があります。この2国間を結ぶジブチ・エチオピア鉄道や高速道路などの物流網によって、互いの国が恩恵を与え合っているという状況であり、これが漁業だけではなく、特にここ10年間においては工業分野にも大きく貢献をしています。内陸国のエチオピアが、なぜ巨大貿易港を持つタンザニアやケニアよりも、海外製造業の誘致に成功しているのか?というと…… [続きは越境会会員様向けメルマガにて配信]